企業がM&Aされる際、経営側のリスクとメリットデメリット注意点は?

M&Aの件数は、近年高まっています。
団塊の世代が引退することも原因となり、中小企業が廃業してしまう代わりに、これまでの事業を引き継いでもらえる事業者や経営者を探す動きについて、この記事では解説しています。

会社や事業の価値を、客観的に見極め、さらに価値を高める可能性がある方法の1つとして、M&Aという選択肢と、その注意点についても、後半で説明していますので、ぜひ最後までご確認ください。

2018年の最新M&A件数の推移


<出典:毎日新聞 ( M&A17年、最多3050件 先進技術取り込む IT分野などで活発)

2017年における日本企業のM&A件数は過去最高の3,050件(対前年費15%増)でした(調査会社レコフ)。その理由は、日本の企業の99%が中小企業であり、経営者の高齢化による事業の承継問題が大きく影響しています。

1995年時点では、中小企業経営者年齢のピークは、47歳であったのに対して、2015年では66歳がピークとなっています(中小企業庁調査室)。

中小企業経営者の引退年齢の平均は70歳ですので、中小企業における事業承継の問題が如何に重要な問題になっているか、ご理解いただけると思います。

では実際に事業の承継の形態は、どの様な形があるのでしょうか?

事業承継の形は、以下3つに区分されています。

親族内承継:現在の経営者のお子様や親族の方に事業を承継する方法です。

役員・従業員による承継:経営者の親族以外の役員・従業員に承継する方法です。

第三者による承継(M&A):株式譲渡や事業譲渡により、外部に事業を承継する方法です。

20年以上前には、①の親族内承継が90%以上でありましたが、最近は、親族内承継が54%、②の役員・従業員承継が25%、M&Aが21%と、親族外への承継の割合が大幅に増えています。特にM&Aに関しては、以前は機関投資家によるファンドによる敵対的買収が話題になったことで、ネガティブなイメージがありましたが、核家族化が進む昨今では、親子間の事業承継が非常に難しくなっており、事業承継の現実的な選択肢として、M&Aを検討される経営者の方が増えています。

それではまずM&Aの内容や経営者にとってのリスクについてご説明します。

M&Aにおける経営側のリスクとは?

M&Aとはあまり聴き慣れない経営者の方も多く、ましてそのリスクを心配される方もいらっしゃると思います。

M&Aとは、会社の合併(merger)株の取得(acquisition)を組み合わせた言葉で、第三者に事業を承継する形として注目されています。

では、実際にM&Aを行う場合、どの様なリスクが経営者にあるのか?そのリスクをどの様にしたら回避することができるかについて、お話しします。

M&Aにおける大きなリスクとして、

・希望と合致する譲渡先企業が、なかなか見つからない。
・譲渡先企業との条件交渉がなかなかまとまらない。
・交渉中に情報が漏れてしまい、従業員や取引先から不信感を招き、事業に悪影響が出る。
・交渉中に相手先企業に自社独自のノウハウが流出する。
・交渉途中で、交渉が決裂してしまう。

以上の様にM&Aによる事業承継の割合が増えているとはいえ、多くのリスクが存在します。

こうした、リスクを回避するには、M&Aに関する情報を広く集める事はもちろん、M&Aの経験が豊富なコンサルタントを探し、綿密な計画の基にM&Aを進める事が重要です。

現在、M&Aのアドバイスに関しては民間の専門企業をはじめ、中小機構(中小企業基盤整備機構)による事業承継・引継ぎ支援センターが全国に設置されています。

事業承継・引継ぎ支援センターでは、無料相談が受けられますので、まずはこちらへの相談から検討をスタートさせたり、民間企業を活用する場合の客観的な相談先としても是非活用されることをお勧めします。

事業承継・引き継ぎ支援センター URL:http://shoukei.smrj.go.jp/

M&Aのメリット・デメリットは?

では、次に事業承継の形としてM&Aを選択される場合のメリット・デメリットを他の2つの事業承継と比較しながら、ご説明します。

事業承継の形

メリット

デメリット

① 親族内承継

・社内外の関係者からの理解を得られやすい。

・後継者の決定が早期に可能である為、準備や教育に時間を掛けられる。

・経営者の能力や意志のある者が、親族内では見つけにくい。

・相続人が複数の場合、後継者の決定や経営権の集約について問題が発生する。

②  役員・従業員
による承継

・親族内に適任者がいない場合でも、後継者を探し易い。

・業務の引継ぎが円滑で、社員からの理解も得られ易い。

・親族内承継に比べて関係者からの理解が得られ難い。

・株式取得に関する資金力が無い場合がある。

・個人債務保証の引継ぎに関して問題が発生する場合がある。

③  M&A

・広い範囲で後継候補者を探す事が出来る。

・現経営者が会社売却益を得られる可能性がある。

・希望条件(従業員の雇用継続、売却価格等)を満たす相手企業を探すのが困難。

この様に事業承継は、それぞれの形ごとにメリット・デメリットが存在します。①や②の形での承継をご希望の場合でも、万一の場合に備えて③の準備をしておくのが得策です。

M&Aの段階別の注意点は?

では、M&Aを選択された場合の具体的な段階ごとの注意点をご説明します。

1.検討スタート時

・事業承継の検討に関わるメンバーを集め、守秘義務の徹底を確認します。

・相手先企業との交渉方法として、直接交渉かM&A仲介業者を介して実施するのかを決定します。

2.M&A仲介業者を選ぶ

・企業の実績だけでなく、担当者がM&Aの実績を持っているかを確認します。

・実績と共に、相性、要望に対するスピード感、責任感をしっかりと見極めます。

・民間業者の場合には、事業承継・引き継ぎ支援センターをセカンドオピニオンとして活用することで、より正しい企業の選択が可能となります。

3.買い手企業への提案時

・秘密保持契約内容の精査が重要です。

M&A担当者と綿密な提案資料を作成します。

・相手先経営者、M&A担当役員と直接面会し、お互いの印象の良し悪しを確認します。

・第三者の紹介の場合には、紹介者との秘密保持契約も重要です。

4.価格交渉時

・売却希望金額の算定根拠を明確にしておきます。

・可能な限り、当初から算定根拠が明確な打倒性の高い価格を提示し、両社の信頼関係を確立する事が大切です。

5.基本合意契約時

・買収金額も含めて、可能な限り最終契約書に近い形で作成します。

・一方的な交渉放棄を避ける為、損害賠償条項を盛り込む事が重要です。

・買収監査に関する取り決め条項を記載します。

6.買収監査時

・買収監査の目的は、両社にとってより良い結果を得る為だという認識を共有します。

・監査結果次第で、買収条件に影響が及ぶ場合が有り得るという共通認識を確認します。

・監査人(公認会計士、顧問税理士、社内経理担当者)に対しても、秘密保持責任を徹底します。

・従業員への情報漏洩を防ぐ為、休日に実施します。

・リスクに関しては、会計、法務だけでなく、幅広く確認を行います。

・監査報告書の内容の納得性を高める為、両社経営者が内容の確認を行います。

7.最終契約時

・重要な取引先との取引解消や、主力従業員の退職など、幅広くリスク条項を盛り込みます。

・どちらか一方に利益が偏り過ぎる契約内容とならない様に配慮します。

8.従業員への発表時

・売り手側の従業員に対して、給料等の雇用条件に変更が無い事など、不安の解消を行うと同時に、新社長から従業員への想いを伝える事が重要です。

・可能な限り、新社長と全従業員との面談の場を設け、従業員の想いや要望を聴く様にします。

・新会社発足時に可能な投資額の範囲で、環境の改善を行い、社員の士気を高めます。

・買い手側の従業員に対して、買収の理由やそのメリットを説明します。

・子会社であっても、上下関係ではなく並列のグループ関係であることを理解させ、子会社の良い点を強調し、理解納得を得る事が重要です。

9.対外発表時

・主要取引先に、両社社長が同席して説明に伺います。この時新しい名刺を事前に準備しておくことも、大切です。

・取引先金融機関への報告並びに代表者変更手続きを迅速に行います。

・一般的な取引先への挨拶状を用意します。

・売り手社長の了解を得た上で、新聞発表等のリリースを行います。

10.M&A

・売り手側の経営者からの引継ぎを迅速に行います。

M&A仲介者の協力も得ながら、発足時に発生する小さなトラブルの解決は極力迅速に行います。

・新従業員への新しい要求事項は、従業員が新会社に慣れるまである程度の時間を掛けて行います。

・両社の歴史理解から交流をスタートさせます。

・買い手側が、売り手側の経営者を大事にする事で、従業員も大事にされることを感じます。

・新従業員を管理し過ぎず、信頼することが円滑な両社融合に繋がります。

 

企業がM&Aされる際のリスク、メリット・デメリットまとめ

以上、企業がM&Aされる際のリスク、メリット・デメリット、実行時の注意点についてご説明を行いました。

事業の承継につきましては、現在70%の企業が経営上の課題と考えているのに対して、約50%の企業では事業承継の計画を進めていないというのが実態です。一般的に後継者の育成には5年から10年を要すると言われており、自社内での解決は容易な物ではありません。

日本の企業社会の中核を成す中小企業が、事業の存続が可能であるにも関わらず後継者不在の為に廃業を余儀なくされるという状況が、日に日に現実の物と成りつつあります。

この様な状況から、経営者の高齢化に伴う事業承継の方法として、M&Aの活用が重要視されています。

実際にM&Aによる事業承継のサポート業務を行っている、東京都事業引継ぎ支援センターの発表では、2017年度上半期内での事業承継。譲渡に関する相談件数は、新規相談が前年同期比で27%増、成約に至った件数が3%増となっており、過去最多の実績となっています。

事業の継承は、検討開始から完了までとても多くの調査、調整や決断が必要となる大変な作業です。

まだ、その時期では無いとお考えの経営者様も、事業承継の選択肢やその為に必要な知識を事前に認識しておくことで、現在の事業に迷いなく打ち込む事ができます。

まずはお近くの事業引継ぎ支援センターの無料相談を活用されて、早めの準備をされる事を是非お勧めします。

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